第4回 絵本翻訳コンテスト 受賞者
最優秀賞 吉田 羊緒子さん(滋賀県) Sra. Yoko YOSHIDA (Shiga)
特別賞 藤坂 容子さん (広島県) Sra. Yoko FUJISAKA (Hiroshima)
特別賞 中村 美乃さん (埼玉県) Sra. Yoshino NAKAMURA (Saitama)
二次審査に進んだ方は以下の20名の皆様です。(50音順)
Merce Torra Reventós さん&大田 智子 さん
石川 理恵子 さん
岩崎 たまゑ さん
上田 愛子 さん
植松 友佳理 さん
川合 由佳子 さん
児玉 さやか さん
小山 今日子 さん
藤坂 容子 さん
田中 智美 さん
徳山 悦子 さん
中尾 しょうこ さん
中村 美乃 さん
丹羽 悦子 さん
星野 由美 さん
森下 嘉子 さん
村田 優子 さん
矢野 真弓 さん
山谷 映子 さん
吉田 羊緒子 さん
『牛とロバ』
Teresa Duran 著
吉田 羊緒子 訳
それは まいばん くりかえされていました。
ご主人が ロバと牛を家畜小屋に入れると 2ひきはきまってけんかをはじめるのです。
ロバは うしろあしで牛をけりながら言います。
「いち年にひと月しかはたらかないなんて あんたはとんだなまけものだよ。」
牛は つので突きかかりながら 言いかえします。
「おまえこそ だらしがない いいかげんなやつのくせに。」
まいばんまいばん 同じことのくりかえしでした。
2ひきは乱暴なけものそのもので けものらしく暮らしていました。
ところが いてつくような寒さの冬のあるばんのことです。
とつぜん 小屋のとびらが開き
おとこの人とおんなの人が はいってきました。
おんなの人は はだかんぼうのちっちゃな赤ん坊を産むと
わらでつつんであげようと
赤ん坊をえさ箱の中におきました。
「やれやれ やっかいなのがまたふえたよ。」ロバは思わず声を上げました。
「まったく気に入らないな。そこをどけよ。」牛もぶつぶつ言います。
このまあたらしいわらは 自分たちのものなんだと言わんばかりに
ロバと牛は えさ箱に首を伸ばしました。すると・・・
とってもちっちゃな はだかんぼうの赤ん坊が つぶらな瞳で2ひきを見つめています。
この子は 赤ん坊そのもので 赤ん坊らしくほほえんでいました。
牛は子を持つことができませんでした。ロバも子を産むことはかないませんでした。
けれど いま 2ひきの目の前にいる ちっちゃな赤ん坊は
乱暴なけものそのものの2ひきを
まるで おとうさんとおかあさんを見るかのように 見つめているのです。
もちろん 2ひきがこの子のおやになることは これまでも これからさきもありません。
でも いてつくようなその夜に 赤ん坊をあたためてやり
あったかい鼻息をいっぱいふきかけて あやしてやることはできるのです。
ふしぎなことに 2ひきはけんかより 赤ん坊のせわがしたいと思ったのです。
ブファー ブファー たっぷり息をふきかけて フガー フガー あっためよう。
ロバと牛は 赤ん坊をあたためてやることに あまりにむちゅうだったので
いつのまにか 小屋が 羊飼いや羊のむれ
星にみちびかれたとうほうのさんはかせ めしつかい らくだ
そして この子を守ってあげたい よろこばせてあげたいというたくさんの人々で
いっぱいになっているのに気がつきませんでした。
いっぽう 赤ん坊はというと そんなみんなを ずっと昔からの友だちを見るかのように 見つめていました。
どんなに 乱暴で けもののような心を持っていても
ののしり合いやけんかをやめて
よるべのない乳飲み子を守り よろこばせてあげれば
クリスマスはやってくるのです。人里はなれたそまつな小屋にも
人の心でなく 乱暴なけものの心しか持たない人でいっぱいの
このおかしな世界のどんなばしょにも。
*オリジナル作品は、傍点およびフリガナがふられていましたが、WEBでの表示の都合上、割愛いたしました。ご了承下さい。
〜主催者より大切なお知らせ〜
この度は、「第1回絵本挿絵コンテスト」の審査結果発表が大幅に遅れ、絵本挿絵コンテストにご応募いただいた皆様、そして「第4回絵本翻訳コンテスト」にご参加いただいた皆様にも、大変なご迷惑をおかけ致しました。
改めてお詫び申し上げます。
挿絵コンテストの最優秀賞受賞作は、翻訳コンテストの最優秀賞受賞作とともに、カタルーニャ語、スペイン語、日本語の3言語版絵本として、2010年12月に出版される予定です。
皆様のお手元に絵本が届くまで、今しばらくお待ち下さいますよう、お願い申し上げます。